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第9章 深愛
漢助は躊躇いも無く近くのホテルへと十汰を抱えて入って行った。
ホテルなんて行ったことがない十汰は、朦朧とする意識の中、漢助がフロントで何かをしている事だけ気付く。
でも、漢助は焦っているようで、ボタンを押す手が二度も連打していた。
「大丈夫か? もう少し我慢しろ」
「…う……ん」
漢助は十汰を抱えながらエレベーターに乗り込み、先に中にいたカップルの視線を痛いくらいに受けながら、最上階のボタンを押した。
そして、扉が閉まり、少し動いてから三階で止まり、先にカップルが降りた。
カップルはコソコソと話しながらエレベーターから降り、また扉が閉まった。
エレベーターはそのまま一度も止まらず最上階へと向かい、綺麗な音を立て扉が開いた。
そこはさっきの三階とは違い豪華な内装だった。しかも、部屋は一つしかない。
それに気付き、ここがこのホテルの中で最高級な部屋だと気付いた。
だから、さっきのカップルはコソコソと話していたのだ。まさか、最高級な部屋を選ぶ人間が目の前にいるなんてと、物珍しかったのだろう。
「ここ、二日借りたから時間なんて気にせずヤレるぞ」
「え……?」
「ボタン、二回押したの見てなかったか?」
「あ……」
そう言われ、十汰はさっきの漢助の行動を思い出す。あれは焦って二回押したのではなく、ちゃんと二日間連泊する為に押したようだ。
「どうする? まず、シャワーでも浴びるか?」
「え……?」
ベッドに優しく落とされて、漢助はそう十汰に聞いてきた。
その言葉に、十汰は思うより先に行動に移してしまうのだった。
ベッドの縁に座った漢助を押し倒したのだ。でも、それは漢助の思惑通りだったらしく、体格差のある身体が難なくベッドに沈んだ。
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