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だって、漢助は絢が出世した事を喜んでいた。
そう見えた。
「それはどうかな。好きだったら一緒に来てくれって言ってくれるでしょ? なのに、助けた男の子と一緒に住み始めるから仕事辞めるって言って、連絡なんて一切無しよ。私もそんな漢助に怒りしかなくて、それを仕事にぶつけて来たから今があるんだけどね」
そう言って、絢はフフッと笑った。
絢にとって、漢助にされた事、言われた事がずっとバロメーターだったらしい。
それによって、女の身でありながらこんな早く出世できた。
「再会できた時は嬉しかった……でも、前みたいな気持ちは無かった」
「え……?」
「なに、このむっさいオヤジ。って思っちゃった。今の恋人には悪いけどね」
「ははっ。それ、俺も同感です」
漢助は五年前に比べて老けたと思う。いや、髭を剃ったり、服装をキチンと着れば元に戻るのだろうけど、本人は面倒臭いと言ってそうしてはくれなかった。
でも、十汰は今のままでも男っぽくてカッコいいと思っているので、あまりとやかく言わず、ほっといていたのだった。
「でも、少しだけ悔しかった」
「え……?」
「あいつ、煙草辞めたよね?」
「あ、はい……。五年前、偶然俺が煙草を吸ったらその時の事を思い出しちゃって発作起こして……それ以降ガムとか飴とか……チョコミントアイスばっかり食べてます」
昔の漢助はヘビースモーカーだったと誠に聞いた事があった。
でも、十汰のそれを見てピタッと辞めた。
吸いたくなった時は、出会った時に噛んでいたミント味のガムで我慢するようになったのだ。
そして、その後。飴、チョコミントアイスに手を出して行った。
その結果。漢助はチョコミントアイスが一番の好物になったのだった。
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