第10章 女心

5/5

353人が本棚に入れています
本棚に追加
/157ページ
 まだ、絢の心の片隅には漢助の存在がいるだろう。でも、それはもう過去の話し。  絢は今を、そして、これから先の未来を見詰めているのだった。  なんて強い女性なのだろうか。  十汰には絢が眩しく見えた。 「あいつにとって、君は光なんだと思う」 「光?」  でも、絢は十汰の事をそう言った。その言葉に、十汰は小首を傾げる。 「君が笑ってると、漢助も釣られて笑ってるのよ。君の無邪気な姿が漢助をそうさせてるのよ」 「え……?」 「無意識にね……。私の時は笑った顔なんて見せてくれなかったのに」  愛されてるね。そう言って、絢は十汰の頭をくしゃくしゃっと撫でた。 「じゃ、私は更に上を目指して頑張るわ。漢助の愚痴を話したくなったら連絡頂戴」 「はい。そうなると、毎日になりますよ」 「ハハッ。君、面白いね」  そう言って、絢は十汰に手を振り、警察署へと戻って行った。  そんな絢を見えなくなるまで見送った十汰は、事務所へと向かい、チョコミントアイスを食べる漢助に笑顔を見せた。
/157ページ

最初のコメントを投稿しよう!

353人が本棚に入れています
本棚に追加