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まだ、絢の心の片隅には漢助の存在がいるだろう。でも、それはもう過去の話し。
絢は今を、そして、これから先の未来を見詰めているのだった。
なんて強い女性なのだろうか。
十汰には絢が眩しく見えた。
「あいつにとって、君は光なんだと思う」
「光?」
でも、絢は十汰の事をそう言った。その言葉に、十汰は小首を傾げる。
「君が笑ってると、漢助も釣られて笑ってるのよ。君の無邪気な姿が漢助をそうさせてるのよ」
「え……?」
「無意識にね……。私の時は笑った顔なんて見せてくれなかったのに」
愛されてるね。そう言って、絢は十汰の頭をくしゃくしゃっと撫でた。
「じゃ、私は更に上を目指して頑張るわ。漢助の愚痴を話したくなったら連絡頂戴」
「はい。そうなると、毎日になりますよ」
「ハハッ。君、面白いね」
そう言って、絢は十汰に手を振り、警察署へと戻って行った。
そんな絢を見えなくなるまで見送った十汰は、事務所へと向かい、チョコミントアイスを食べる漢助に笑顔を見せた。
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