第11章 終

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 十汰はそんなさきえに言葉が見付からず、心の中で謝るしかできなかった。  五年前に信之助が捕まっていたらこんな事にはならなかった。  そう思うと、十汰はさきえの顔が見れない。 「ねぇ、今度二人でご飯でも行かない?」 「え……?」 「十汰君の笑顔見てると元気が出るのよ。ねっ、いい?」  さきえはそう言うと、十汰の手を握った。その手は温かく、柔らかかった。 「は、はい! こんな俺で良ければ行きたいです!」 「ほんと? 良かった」  さきえは安堵した顔を向け、十汰の頬を優しく触る。その手はまるで母が子に向けるようなそんな優しい手付きで、十汰はその手を自由にした。 「ごめんなさいね、触っちゃって」 「いえ、どんどん触って下さい! こんな俺で良ければ! いつでも貸します!」 「ふふっ、触り過ぎて伊達坂さんに怒られちゃいそう」  そう言って、さきえは笑顔で十汰に手を振り、事務所を出て行った。  その数分後。漢助がキッチンに来て、出かける準備をしろと言い出す。 「う、うん! ちょっと待って!」  十汰はその言葉に慌てて火を消すと、部屋に行き、薄手のジャケットを手に取って漢助の後を追った。  そして、車に乗った漢助を見て、助手席へと乗り込む。 「どこ行くの?」  そう聞くと、漢助は前を向いたまま答える。 「新しい依頼をしにな」 「え……?」  それは、さっきさきえが話していたやつだろうか。十汰は新しい依頼と聞き、少しだけワクワクした。  あんな目にあっても懲りない所を見ると、自分は意外にも探偵向きなのかもしれないと自負してしまう。
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