第11章 終

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 漢助は車を走らせ、高速道路に乗った。と、言う事はたぶん遠出だ。  車はビルがある場所からどんどん遠のき、山がある自然な場所へと進んで行く。  数時間後、車は高速道路を降り、山道を通った。途中くねくねとした道が続き少しだけ酔ったが、窓の外を見て、大自然を見ているとそれが段々良くなり、車はそのまま山の中にある寺の駐車場の中で止まったのだった。 「ここ……」 「葉山さんのご先祖さんが眠ってる所」 「え……?」 「つまり、ここに雪音さんも眠っている」 「!」  漢助はそう言うとドアを開け、砂利道を歩き出す。その後を、十汰は無言で追った。  時期は彼岸入りしたからか、並ぶ墓には花が綺麗に供えられていた。  ここに来るなら途中にでもお花を買ってくれば良かったのにと十汰は思ったが、この男がそんな事を考えるとは思えなくて、仕方ないかと諦めた。 「いた……」 「え……?」  漢助が誰かを見付けた。  その視線の先を見ると、男の背中があった。  誰だろう、そう思った瞬間、男が振り向く---新だった。 「探偵さん……」  新はここに漢助がいる事に驚いた顔をしていた。まさかここに来るなんて、そんな顔だ。 「ここにあなたがいるって葉山さんから聞きました」 「ハハッ、社長には敵わないな……有給使ったのが悪かったのかな……」  新はそう言うと、雪音が眠る葉山家の墓から離れ、こっちに来た。  その後ろを見ると、墓には雪音と薫が好きだった白いかすみ草が綺麗に供えられていて、線香の煙が上へと上がっていた。  新がしたらしい。
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