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新は漢助に近付き、切なく笑う。そして、十汰達を近くの庭園へと連れて行った。
「ここ、綺麗ですよね。山に囲まれ、自然があって……車を数時間飛ばせばこんな綺麗な所があるんですよ」
新はそう言うと、両手を伸ばし、外の空気を深く吸った。そして、何故ここに来たのかと漢助に聞く。
「さきえさんの依頼で来ました」
「社長の依頼? どう言う事ですか?」
「雪音さんの本当の気持ちを、あなたに教えてあげて欲しいとの事です」
「それって……」
「あなた、離婚してますよね? 今年の春」
「!」
「え? そうなの……?」
「それ、誰から……」
「前の奥さんからです」
新は漢助が離婚についてまで調べていた事に驚いた顔をしていた。まさか、そんな個人的な部分までも調べていたなんてと、新は笑うしかなかったようだ。
「雪音さんにはそれを言っていなかったようですね……」
「はい。中々言えなくて……」
「それは、雪音さんが関係しているからですか?」
「……はい。そうですね」
そう言って、新は離婚の経緯を話した。
その話しを、十汰と漢助は黙って聞いた。
「ずっと我慢してくれてたんです。俺の心が雪音から離れるのを……ずっと。でも……そんなのいつまでも来なかった……。妻よりも、雪音の方を心から愛しているから」
でも、雪音はいつだって他の人間を見ていた。そう言って、新は下唇を噛んだ。
「それは、姉の薫さんの事ですか?」
「な…なんで……」
「前に会った時、あなたが言った言動が少し気になってましてね。あなたは雪音さんの恋人を知っている。でも、それは口に出して言えない人物。たぶん、同性の女性だと思いました。そして、それが姉である薫さんだと思ったんです……」
その漢助の言葉に十汰はハッとなる。何故なら、さきえが言った言葉を思い出したからだ。
さきえは十汰と漢助の関係に気付き、女性同士も大変だと言った。
それは雪音と薫の事だと、十汰はようやく分かった。
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