第11章 終

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 帰りの車内の事だ。あと少しで事務所に辿り着く目前で、十汰はある事を漢助に聞いた。  その返答を、十汰はどうしても今知りたかったのだ。 「ねぇ、漢助……」 「ん? なんだ?」 「前にさ……」 「前に?」 「俺が初めて漢助に好きだって伝えた時、一回外に出て白のかすみ草を買って渡してくれたじゃん。それって何か意味があった?」 「……さぁな」 「嘘。あるんでしょ! 言ってよ!」  十汰は聞きたかった。  当時、高校を卒業したばかりだった十汰は、漢助に対する気持ちを持て余していた。  男同士。しかも、恩人。そんな人に恋をしてしまった事に戸惑いがあったのだ。  でも、好きな気持ちは変わる事がなく、日に日に増して行くばかり。  十汰は高校を卒業してすぐに、漢助に自分の気持ちを告白した。  漢助は、驚いた顔なんかしなかった。分かっていたようだ、十汰の漢助への秘めた気持ちを。  でも、漢助はその告白に首を縦には振ってはくれなかった。---悪い……。そう言って、外に出た。  十汰は振られたのだと思った。ここにはもういられない。そう、思った。  けれど、ベッドで泣いてた十汰に、外から戻って来た漢助が無言で白のかすみ草の花束を渡して来たのだった。そして、---まだだ……。そう言って顔を赤く染めて事務所へと消えていった。  花なんて似合わない漢助が、どうしてあの時十汰にかすみ草の花束を渡したのか。その時は意味なんてないと思っていたが、その後、振られて傷心していた十汰は、なんとなく花言葉なんて調べて、もしかしたら、そんな理由があるのかな。なんて、勝手に期待したのだった。  だからあの時、漢助は「まだだ……」と言ったのではないかと思った。  実際、二十歳になってから何十回目の告白で、首を縦に振ってくれた。 「ねぇ……漢助……」  十汰は運転する漢助の横顔を見詰め、聞く。  知りたい。漢助の気持ちを。直接、漢助の口から。 「……たくっ」 「え……?」  突然、漢助がそう言ってハザードランプを点けた。そして、車がゆっくり路肩に止まった。  その行動に、十汰は驚く。
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