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第2章 依頼
朝十時過ぎ。一人の女性が事務所へとやって来た。
女性は短髪の五十代くらいの綺麗な女性で、美魔女と言っても良いほど美しい顔立ちをしていた。
そんな依頼人を見て、十汰はいつもよりもドキドキした。それは、その女性が美人だったからではなく、十汰にとってこれが初めての助手仕事になるからだ。
「初めまして、私、葉山さきえ《さきえ》と言います。こちら、つまらない物ですが食後にどうぞ」
「あ、すみません」
十汰は玄関先でさきえから保冷剤付きの袋を渡され、それを受け取ると、すぐにさきえを事務所内に迎え入れ、冷凍庫へと閉まった。袋にはアイスクリームの絵柄が描かれていたので、中身はたぶんアイスクリームだ。
それを見て、十汰はすぐにその差し入れを支持したのは誠だと気付く。
「どうぞ、こちらにお掛けください」
「はい。失礼します……」
十汰は立っていたさきえをソファーに座らせ、冷たい珈琲を淹れてそっとさきえの前に置いた。
そして、まだ眠っている漢助を起こしに行く。
「ねぇ! 依頼人来たよ! いつまで寝てんの?」
「ん……はいはい」
漢助は寝癖を付けたまま、大きなあくびをして起き上がった。そして、十汰に背を押されながら、ヨタヨタと歩き出してヨレヨレのジャージ姿でさきえの前に現れた。
そんな漢助を見て、驚いた顔と不安そうな顔を見せるさきえ。
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