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そうなるのも無理はない。
漢助のそのやる気のなさは誰しもが不安になり、そんな依頼人の表情を十汰は何回も見て来た。
でも、依頼内容が終わると、皆、その顔が嘘だったかのような笑みを浮かべ、感謝の言葉を漢助に述べていた。
そんな変化を何回も見て来た十汰は、漢助の腕がどれだけ凄いのかをこの目で見て見たいと思うようになり、それが今回叶う事になった。
さて、今回の依頼も漢助の凄さが際立つ物になるのだろうか。
見物だ。
「どうも。ここで探偵してます伊達坂漢助です……葉山さんですよね? 幸村弁護士のご紹介で来た……」
漢助はさきえの名前を誠に聞いていたらしく、さきえが言わなくても名前を知っていた。
「は、はい。幸村先生には、私の会社の顧問弁護士をして頂いてまして、伊達坂さんの事を教えて頂きました」
「それはどーも」
さきえは丁寧に漢助に自身の名刺を手渡した。それを見て、漢助は直ぐにテーブルの上に置く。
十汰はささっと静かに漢助の隣に座り、ワクワクした顔をさきえに見せる。
「こちらは……」
さきえは十汰が漢助の隣に座るのを見て、少しだけ戸惑った顔をしていた。関係ない人間も一緒に聞くのかと思ったようだ。
それを感じ、十汰は自己紹介をする。
「あ、俺は片倉十汰って言います。漢助の助手です!」
「そ……そうなんですね。お若い助手さんですね」
「はい! 二十歳です!」
十汰はさきえに不信感を抱かせない為、できるだけ元気に振る舞った。
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