第2章 依頼

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 漢助は腕を組み、何か考え込む姿を見せた。  漢助はさきえのその〝噂が後から流れた〟に引っかかっているようだった。 「新君にもちゃんと証言して貰ったんです。雪音がその日、アルコールをグラスニ杯程度しか飲んでいなかったと……」 「でも、雪音さんがアルコールに弱い体質なら、ニ杯飲んだだけで酔う事はありますよね?」  確かに。漢助が言うようにアルコールが弱い人間もいる。  十汰もその一人だ。  グラス一杯の酎ハイを飲んだだけでヘロヘロになってしまう。 「それはないですね」  けれど、さきえはそれを否定した。 「あの子、私に似てアルコールが強いんです。体育大に通っていたのもあってか、お酒は水なんて言い出す子で、ニ杯飲んだだけで酔うなんてありえません……」 「そうですか……」 「それに、新君も雪音は全く酔ってはいなかったと言っていました。次の日は仕事があるから、そこまで飲まないようにしよう。そう決めて、早々と解散したようです」 「なら、その後に飲んだって事は……」 「それもありえません。あの子は一人で飲む事が嫌いな子なんです。新君と別れて何処か一人でなんて想像もできないです」  さきえはそう言うと、信じて下さい、そう付け加えて漢助の目を縋るように見詰めた。 「あの子は確かに車を運転しました。でも、自ら進んで車に乗るなんてありえない。飲酒運転なんて絶対にしない子なんです。お願いしますっ、あの子に何があったのか、真実を知る為に力を貸して下さいっ」 「葉山さん……」  子を想う母の今時珍しい姿に、十汰は一人、胸が切なくなった。  もし、自分が雪音のようになったら、十汰の両親はこんなにも必死になって誰かに頭を下げるだろうか。  いや、それはありえない。  金で解決するような連中だ。こんな風に懇願する事はしないだろう。
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