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十汰はその箱を持ち、すぐさま二人の元に戻る。
「葉山さん、アイス頂きますね!」
「あ、はい」
「アイス……?」
十汰はさきえの前にアイスとスプーンを置き、そして、次に漢助の前にそれよりも一回り大きなアイスを置いた。
「!」
その瞬間、さっきまで無愛想だった漢助の表情が、少しだけ和らいだのを十汰だけは気付く。
「これ、葉山さんが持って来てくれたんだよ。漢助の好きなチョコミントアイス。それもビックサイズ! それに、ここって前に漢助が言ってた奴だよね? ネット通販したけど一年待ちだったって言ってなかった?」
「そうなんですか? ここの会社とは繋がりがあって、伊達坂さんがチョコミントアイスが好きだと聞いて取り寄せて貰ったんです」
「そうなんですよー。漢助、チョコミントアイスに目がなくて。俺は歯磨き粉みたいで苦手なんですよねー。ハハッ」
漢助はチョコミントアイスが何よりも好きな男で、特にここのアイスがずっと食べてみたいと小声で言っていたのを十汰は聞いていた。
だから、この手土産にはさきえにとって良い方向の風が吹くと十汰は確信を得る。
「食べたい?」
十汰は手に持つスプーンをチラッと見せ、漢助にそう言った。
その言葉に、漢助は少しだけ固まり、チッと舌打ちをした後、手を伸ばして来た。
「依頼……引き受けました」
そして、十汰からスプーンを受け取ると、それを食べながらさきえにそう言ったのだった。
それを聞き、十汰はさきえと目を合わせ、ニコッと笑みを交わした。
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