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第3章 開始
さきえから依頼を頼まれて二日後。
十汰は夏休みに入り、準備万端、やる気満々で、探偵の仕事をする日を迎えた。
今日は、朝からとても暑かった。
夏を感じる暑さと、ジメッとした汗ばむ肌に、少しだけ外に出る事が嫌になってしまいそうになる。 そんな日だった。
でも、そんなの十汰にはどうって事ない。
早く依頼がしたい気持ちでいっぱいで、夏の暑さなんて気にしない。
でも、隣にいる漢助だけは外に出る前から嫌そうだった。
「あちー……」
そう言って、十汰の隣でバタバタと団扇を扇ぐ漢助。それは、さっき歩いている途中に団扇配りの女の子から不意に受け取った物だった。
「夏だもん、当たり前じゃん」
「アイス食いたい……」
漢助は十汰とは違いヤル気ゼロのようで、怠そうな表情を朝からずっとしていた。
「出る前に食べたじゃん。それ以上食べたら糖尿病になるよ」
「大丈夫。運動してるから」
「え? 運動って?」
漢助が運動をしている姿なんて今まで見た事がない。だから、十汰は驚きのあまり、ピタッとその場で歩みが止まる。
「夜の営み」
「なっ!」
「二人でやってるだろ。まぁ、素股程度だけどな」
その言葉に、十汰は赤面してしまう。
まさか、そんな事を言うとは思ってもいなかった。
「なに、こんな朝っぱらから変な事言ってんだよっ! 恥ずかしいだろ!」
「うっ、イテッ……」
十汰はそんな馬鹿な事を言う漢助の背中を思い切りバシッと叩き、漢助を置いて一人先にスタスタと歩き出した。
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