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漢助はそんな十汰を見て笑い、叩かれた場所を静かに撫りながら先に歩く十汰の後を追うように付いて来るのだった。
十汰の手にはさきえから貰った地図があり、それは雪音の住んでいたマンションの住所が手書きで書かれた物で、それを頼りに十汰は先頭を切って歩いていた。
「この信号を曲がって……あれ?」
漢助はあまり地図とか頼らずに、なんとなく勘だけで進んで行く男なので、ここはしっかり自分が先頭を取らないとと思っていた十汰だったが、まさかの迷ってしまった。
やってしまった……。
「迷ったのか?」
「……うん」
「だろうな。ここら辺狭いから」
そう言われ、十汰は後ろを振り向く。
「え? 漢助、ここら辺の事知ってるの?」
そう聞くと、漢助は驚く十汰の横をすっと通り過ぎ、勝手に進んで行く。
「まぁ、ここら辺の地図をチラッと見ておいた」
「え!?」
「あと、依頼人の会社周辺とか、その他諸々……」
「い、いつの間に!」
「朝、アイス食いながら」
(あの時か!)
そう言われ思い出す。
新聞を見ていると思ったけれど、あれは地図だったようだ。
(そう言えば……なんか見てたな……)
でも、広げて見てるなと思っていたら直ぐに閉じていた気がする。
だから、漢助が言ったようにチラッとだったと思う。なのに、あの一瞬でここら辺を把握したと言う漢助の言葉が未だ信じられない。
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