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十汰は疑いながら漢助の後を追うように付いて行く。
すると、漢助は地図に載っていない道を進んで行き、あっという間に雪音が住んでいたマンションの駐車場に辿り着いた。
「どうだ? 時間前に着いたろ」
「お見事です……」
そうドヤ顔で言われ、十汰は拍手を送った。
だって、あんな一瞬しか見ていないのに、近道がある事を把握していた。
いつもなら十汰任せなのに、今日の漢助は何処か違う。
やっぱり、依頼となると真面目な部分が出て来るのだろうか。
そう思い、チラッと漢助の横顔を見詰める。
「んあ? なんだ?」
「!」
十汰は漢助の横顔にドキッとしてしまい、パッと顔を晒した。
「う、ううん。なんでもないっ」
本当、無駄にイケメン。
「ここか……」
「え? あ……」
駐車場の敷地の中に不自然に立つ一本の電信柱。そこには、車がそこにぶつかった事を見ただけで分かるほどの痛々しい傷跡がまだ残っていた。
それに気付いた漢助は、ゆっくりとそこへと進み、その辺りや電信柱全てを睨み付けるようにじっくりと見詰め始める。
「早かったですね……」
「葉山さん」
電信柱を見詰める漢助の背を見詰めていると、突然背後から声を掛けられた。
さきえだった。
「おはようございます。今日はわざわざお越し下さってありがとうございます」
「い、いえ。現場はここで合ってますか?」
「はい。今、伊達坂さんが見詰めるそこが雪音が車で突っ込んだ場所です……」
そう言って涙を馴染ませるさきえ。
やはり、ここに来るのはまだ辛いようだ。
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