353人が本棚に入れています
本棚に追加
/157ページ
自分の言う事が全て雪音が自殺だと言っているようで辛いようだ。
それに加え、アルコールが入っていたのなら特にそれが決定打になってしまう。
娘を庇えば庇うほど、真実がうやむやになって行く。それが、さきえには辛くて苦しいのだと、十汰はさきえの肩を摩り、そう思った。
「雪音さんって、アルコールを飲んで豹変したりする女性でしたか?」
「いえ、昨日も言いましたがアルコールには強い子です。そんな姿見た事はないです」
「ですよね……。なら、中に行ってみますか」
「はい……」
漢助は頭をぽりぽりと掻き、雪音の部屋に向かおうとした。
「漢助……?」
でも、突然聞こえた女性の声で漢助が止まる。そして、ハッと後ろを向いた。
「絢……?」
漢助はそのスーツ姿の女性を見て驚いた顔をしていた。それは、その女性も同様で、二人はお互いの顔を見て数秒止まっていのだった。
「漢助?」
そんな漢助を見て、十汰は何故か心が騒ついた。だから、十汰は漢助に近付き、袖を掴んで揺らす。
「白石さーん。歩くの早いっすよー……って、誰っすか? この人達?」
絢と呼ばれた女性の後ろから、汗だくになったスーツ姿の二十代くらいの男が姿を現した。
その男の声で絢はハッと我に返り、漢助に近付いて来た。
「漢助、久しぶりね。元気だった?」
「あぁ……お前もか?」
「ええ、お陰様でね。バリバリ出世してるわよ。去年、警部になったの」
「フッ。お前らしい……」
「漢助……?」
漢助は何処か懐かしい気持ちを持ったのか、ジーンズのポケットからミントのガムを取り出し噛み始めた。
最初のコメントを投稿しよう!