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それは、漢助が煙草を吸いたくなったらする行動で、やっぱり絢を見て動揺しているのが十汰にだけは分かった。
「で、警部がなんでここに?」
「え? あ、ちょっと用事がね……。水沼君、花買って来た?」
「買って来ましたよー。はい、これ」
スーツ姿の男は、絢に黄色をメインとした花束を渡し、ふーっと汗を拭った。
「なんでこんなにかすみ草多いの? ケチったの?」
でも、絢が思っていた通りの花束ではなかったらしく、買って来たその男を鋭い目付きで睨め付けた。
「ええ! ケチってないですよー。ただ、お任せで作って貰ったらそうなったんですぅー」
「あ、そう……」
そう言われ、絢は電信柱にその花束を置いた。そして、両手を合わせる。
それを見て、さきえが絢に駆け寄る。
「雪音の友人ですか?」
「はい。雪音さんは中学の時の後輩でした」
「そ、そうだったんですか……」
絢が雪音の先輩だと知り、さきえは絢に深く頭を下げる。そして、何度も礼の言葉を告げていたのだった。
「雪音さんがここで亡くなったと聞いて……現場が近かったので、寄らせて貰いました」
「それはわざわざ……ありがとうございます」
さきえは涙を流し喜んでいた。
雪音の為にわざわざ花を買ってお供えしてくれた人と会い、嬉しかったようだ。
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