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さきえが涙しているのを見て、絢も涙を貰ってしまったようで、クールそうな表情を少しだけ崩していた。
「つーか。アンタらなんですかー?」
でも、その言葉に皆現実に戻る。
そして、男が急に十汰を見てニコッと笑い、近付いて来た。
なんだ、コイツ。そう思ったら、頭に手を置かれた。
「中学生はこんな所に来てないで、夏休みのお勉強しないと駄目っすよー」
「ちゅっ! 俺は二十歳だ!」
「わーお! 二十歳? 見えないっすねー!」
「なっ!」
十汰は男の手を払い、少しだけ背伸びして身長差を埋め、眉根に皺を寄せ詰め寄る。
「そっかー。二十歳かぁー。可愛い顔してるから中学生かと思った。あと、その身長」
「なっ!」
人が気にしている所を……ズケズケと。
「こら、さっきから何失礼な事言ってんのよ」
「あ、すんませーん。だって可愛くて」
「ちょっ…なに……?」
男がジロジロと見てくる。その視線が気持ち悪くて、十汰は慌てて漢助の背中に逃げた。
「あれー? 怖がっちゃった? パパの所に隠れなくてもいいのにー」
「パッ! パパじゃない! 漢助は俺の……俺の……」
恋人だ! と、言いたかったが言えるわけはなく、十汰は漢助の背中に隠れながら警戒心だけを男にぶつけた。
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