第3章 開始

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 漢助も絢に対し、自身が探偵になった事を言いたくはなかったようで、面倒臭いと顔が言っていた。 「なんで探偵なんか……」 「なんでって、それはお前が一番知ってるだろ……」 「それは……」 「俺は、組織の中でやって行くのは無理だ。上に従うなんて事はもうできない……でも、人を助ける仕事はしたい……ただ、それだけだ」  漢助はそう言うと、雪音のマンションへと歩み始めた。その後を十汰は直ぐに追いたかったけれど、漢助と絢との関係が深いと知り、何故か追う事に躊躇いが出た。 「待って、漢助……」 「!」  絢が突然走り出し、漢助の袖を掴んだ。  その顔は赤く染まり、さっきまでのクールな物ではなくなっていて、女の顔になっていた。 「これ、私の今の連絡先……。あと、住所……。前のマンション引っ越して、今は県警から近い所に住んでるの……。また、一緒に飲もう」  絢は慌てて一枚の紙にサラサラっと連絡先を書き始めた。そして、それを漢助の手に仕舞う。 「白石……」  その誘いに、漢助は見るからに戸惑っていた。  受け取るか受け取らないかを悩んでいるようだった。  そんな漢助を見て、十汰は一人、心が更に騒ついていた。  受け取らないで……。そう、心の中で願った。 「……気が向いたらな」  でも、そんな十汰の気持ちに気付かず、漢助は絢に渡されたその紙を受け取ってしまう。 (受け取っちゃうんだ……)  恋人が目の前にいるのに、自分に気がある女の連絡先を受け取るなんて。  無神経なのか、無自覚なのか、能無しなのか。  漢助の心理が分からない。
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