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十汰は下ろしていた両手をぎゅっと強く握り、二人の姿を無言で眺めていた。
今は二人の世界。まだまだ子供な自分が入って行く事はできない。そう、思った。
「じゃ、俺達も交換しない?」
「え……?」
信之助はいつの間にか十汰の横に来て、スマホを取り出しそう言って来た。
「仲良くしようよ。ねっ」
その屈託無い笑みに、十汰はさっきまでの憤りを忘れてしまい、フッと笑ってしまう。
「まぁ、いっか」
「おっ、ノリ良いね。ささっ、スマホ出して」
「はいはい」
十汰は信之助にそう言われるがまま、スマホを取り出した。そして、その場で連絡先を交換する。
「おっ。来た来た。可愛い名前だねー。じゅったん」
「じゅったん?」
突然、変なあだ名を付けられ困惑する十汰。
なんて言う可愛らしいあだ名を付けてくれるのだろうか。
こんなの誠が聞いたらすぐにその名で呼ばれそうだ。
「じゅったんって感じじゃない? 呼ばれた事ない?」
「ないです」
十汰はそうキッパリと返した。
でも、顔が童顔な為、そのあだ名が似合ってしまう自分。
漢助みたいに男らしければ、そんなあだ名を付けられる事はないのに。
そう思うと溜息が出そうだ。
「じゃ、じゅったん。またね」
信之助はそう言うと十汰にウインクして来た。
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