第3章 開始

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 十汰は下ろしていた両手をぎゅっと強く握り、二人の姿を無言で眺めていた。  今は二人の世界。まだまだ子供な自分が入って行く事はできない。そう、思った。 「じゃ、俺達も交換しない?」 「え……?」  信之助はいつの間にか十汰の横に来て、スマホを取り出しそう言って来た。 「仲良くしようよ。ねっ」  その屈託無い笑みに、十汰はさっきまでの憤りを忘れてしまい、フッと笑ってしまう。 「まぁ、いっか」 「おっ、ノリ良いね。ささっ、スマホ出して」 「はいはい」  十汰は信之助にそう言われるがまま、スマホを取り出した。そして、その場で連絡先を交換する。 「おっ。来た来た。可愛い名前だねー。じゅったん」 「じゅったん?」  突然、変なあだ名を付けられ困惑する十汰。  なんて言う可愛らしいあだ名を付けてくれるのだろうか。  こんなの誠が聞いたらすぐにその名で呼ばれそうだ。 「じゅったんって感じじゃない? 呼ばれた事ない?」 「ないです」  十汰はそうキッパリと返した。  でも、顔が童顔な為、そのあだ名が似合ってしまう自分。  漢助みたいに男らしければ、そんなあだ名を付けられる事はないのに。  そう思うと溜息が出そうだ。   「じゃ、じゅったん。またね」  信之助はそう言うと十汰にウインクして来た。
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