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そのウインクをスッと交わし、十汰はヘラヘラと笑う信之助にサラッと手を振り見送った。
でも、絢はなんだか離れがたい顔をしていて、ずっと漢助の背を見ていたのだった。
「おい」
「なに?」
先に進んでいた漢助の後を追い、横に並んだ十汰。すると、漢助が訝しい顔でこっちを見て来たのだった。
「連絡するのか?」
そう言われ、十汰は、はぁ? となる。
なんでそんな事を聞かれないといけないのか。自分だって過去に何かしらあったと思われる絢と交換したくせに。
そう思うと、沸々と苛立ちが込み上げる。
「するよ。水沼さん、チャラそうだけど良い人そうだし」
最初は自らしようとは思ってもいなかったが、漢助がそう言うので、家に着いたらすぐに連絡を入れてやろうかと思った。
「まぁ、近い年齢の友人ができる事は良い事か……。でも、相手が警察官だからって気を許し過ぎるなよ」
「分かってるよ、そんなの!」
いや、訂正。
確実にします。
「あの……エレベーター来たのですが……」
十汰と漢助が二人で軽く衝突していると、二人の前を進んでいたさきえの足が急に止まり、申し訳なさそうにそう言って来た。
「あっ、すみません! すぐ乗ります!」
十汰は慌ててエレベーターに乗り込み、さきえに軽く頭を下げた。そして、心の中で反省する。
今、自分はここに何をしに来たのかを再度考え直さなければと思い直す。
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