第3章 開始

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 これは、さきえだけの為ではない。  雪音の為にも真相を暴かなければならない。 「俺、役に立たないと思うけど頑張ります」 「倉片君……」 「雪音さんが真実を伝えて欲しいって言ってる気がするんで」  会った事も、話した事もないけれど、何か手伝える事があるのなら手伝いたい。  その気持ちが更に強くなった。 「? あれ? テレビって点けてましたっけ?」 「いえ。点けてなかったはず……」  突然、リビングの方から男女の話し声が聞こえて来た。それも、大ボリュームで。  それを聞き、十汰は慌ててさきえと共にリビングへと戻る。 「漢助! なんで急にテレビなんか……」 「シッ。普通にしてろ」 「え……?」  十汰が大声で漢助に声を掛けると、漢助は唇に右手の人差し指を当ててそう言って来た。  その真剣な顔と言葉に、十汰は慌てて口を抑える。 「葉山さん……こっちに来て下さい」 「は、はいっ」  静かにそう漢助が話したので、さきえも小声でそう答え、静かに漢助の横に並んだ。  それを確認し、漢助が不自然に壁との隙間が空いた棚を指差し、それを静かに退かそうとした。 「漢助……?」  その行動に、十汰は小首を傾げる。  一体、何をしているのだろうか。 「……これ、何か分かりますか?」 「え……?」  漢助が棚を少しだけ晒すと、そこには隠れていたコンセントが現れた。  でも、そのコンセントには小さくて黒い物がくっ付いていた。  それを指差し、漢助が小声でさきえに言う。
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