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危なくさきえに迷惑を掛ける所だった。
十汰は漢助に、ごめんっと謝り下を向き、トコトコと漢助から少し離れた。
「はぁ……俺って足手纏い……」
そう心の声が口から溢れる。
もっとスマートに熟したい。そう思っているのに、それが空回りしてしまう。
こうならないようにって思ってたのに。
「あ……綺麗……」
そんな落ち込む十汰に、受付カウンターの直ぐ側にあったフラワーアレンジメントが癒しをくれる。
かすみ草をたくさん使ったそのアレンジメントは、ピンク色のバラやカーネーションを上手く引き立て、受付カウンターを華やかにしていたのだった。
「かすみ草だ。可愛いな……」
色々花はあるけれど、こうやってその花を引き立てているかすみ草は、なんだか健気に見えて可愛く見えた。
自分も、こんな風に漢助を引き立てられるような男になりたい。そう思った。
「かすみ草、お好きですか?」
「え……?」
十汰がかすみ草に触れ、そう呟いていると、突然、緑色のエプロン姿の男が声を掛けて来た。
その男は長身で、細身。分厚い黒縁眼鏡を掛けていた。
年齢は大体二十代後半くらいだろう。漢助よりは年下に見える。
「あ、すみません。かすみ草を可愛いと言っているのが聞こえて……」
男は十汰の言葉を聞いてしまい、焦りながら謝り出す。その言葉に、十汰は謝らないで欲しいと告げるのだった。
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