第4章 行動

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 男が身に付けているエプロンを見ると、そこには〝タオリフラワーショップ〟と書かれていた。  それを見て、もしかしてと十汰は思った。 「あの、このお花作ったのってあなたですか?」  そう聞くと、男は恥ずかしそうにコクッと頷いた。 「は、はい。ぼ、僕です」  そう言って、男は額の汗を拭いながら、十汰に胸ポケットから取り出した名刺を渡して来た。 「ぼ、僕は他織(たおり)長信(ながのぶ)と言います。……ここの会社の花は私の会社が管理させて頂いてるんです」 「えっ! 他織って事は社長さんですか!?」  にしては若く見えるけれど。 「い、いえ。あっ、父がオーナーで、僕はただの従業員です」 「でも、凄いです! こんなに綺麗なアレンジメントができるなんて!」 「む、昔から花が好きで。引き篭もりだった僕の為に父がこの花屋を開いてくれて……だから……色々と勉強して……」 「へー。努力家なんですね」  いくら花が好きでも、こんな風に芸術的に作る事はできないと思う。  長信には何か秘めた才能があり、それを理解してくれていた長信の父親が、その才能を生かす事ができる仕事場を与えてくれたに違いない。  十汰にはそう思えた。 「か、かすみ草が一番好きで。かすみ草をたくさん使ったアレンジメントが得意なんです」 「そっか。だから、かすみ草がふんだんに使われてるんですね」 「は、はい。そうなんです」  長信はそう言うと、ニコッと笑った。  その笑みに釣られ、十汰もニコッと笑う。 「十汰君もかすみ草が好きなら、今度僕のお店に来て下さい」 「あ、はい……行きま……」 「お前、誰と話してるんだ」 「漢助!」 「青葉さん来たぞ。かすみ草の話しなんてしてないで、早く来い」 「う、うん!」  漢助はそう言うと、スタスタと行ってしまう。
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