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その言葉に、十汰は心が痛くなる。
一番自分を愛してくれた人が二人も亡くなり、新の心は今、どんなに切なく悔しいのだろう。
「雪音とはその一軒で別れました……時間は十一時過ぎですかね。友人から電話が来て、それを出た後、帰ろうかってなったのを覚えてます」
「そうですか……。では、言いにくい質問をしても良いですか?」
「え……? はい……」
「あなたと雪音さんの関係は、本当に兄弟の様な間柄ですか?」
「ちょっと、漢助!」
漢助がまさか、そんな直球にデリケートな部分を投げるとは思ってもいなくて、十汰は焦った。
でも、その言葉に新は憤りを見せる事はなく、笑っていた。
「いえ。全く無いですよ。でも……」
「でも……?」
「俺はずっと雪音が好きでした……」
「え……?」
「妻もそれを知ってます。でも、雪音には俺の存在は見えてないので、そんな俺の気持ちを妻は全て理解してくれてて……寛容な妻なんです」
「一度の誤ちなどはありますか?」
「それは絶対にないです。俺は妻の事も愛してます。妻を裏切る事はしません……それに、雪音も妻と仲が良いので、そんな事を匂わす事は絶対にしません。疑うような事をしたら、いつも笑顔でいてくれる妻が悲しむ事を雪音はしたくないって言ってます……。もし、妻がもう二人で会わないでと言えば、俺達は二度と二人で会う事はないと思います……」
「そうですか……。では、あの噂はどうして流れたのか分かりますか?」
「噂ですか?」
「雪音さんが亡くなった後、あなた達が不倫関係だったと会社内で広まり始めたと葉山さんから聞きました」
雪音が亡くなった後、流れた噂。
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