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その噂を聞き、漢助は新に何かを確認したかったようだ。
「あぁ……俺もその噂を上司に聞かれました。でも、そんなの絶対にないし……二人で飲んでいた所を誰かに見られて生まれたとしか言えないです……」
「そうですか……。二人で飲む事は多々ありました?」
「はい。姉の月命日で時間が合った時や、雪音の誕生日はいつも二人で飲んでました。時々、妻も交えて三人の時もありましたが……」
「では、雪音さんに交際している人物はいますか?」
「え……?」
漢助のその言葉に、急に動きを止めた新。そして、いませんでした。そう、答えた。
「そうですか……」
「はい……そんな話しは聞いた事ありません」
そう言って、苦しそうに笑う新。
何かを隠している事は確実だった。でも、そこを強く指摘する事はできないと、十汰は思った。
「では、最後に。雪音さんが何か困っていた事、悩んでいた事とかありましたか?」
「え……? いえ、何も……」
「そうですか……」
漢助はそう言うと立ち上がり、便所と言って退室しようとした。その一瞬、十汰の耳元で、「何か聞いとけ」と呟き、その言葉に十汰はコクッと頷く。
「あの、雪音さんと薫さんってバドミントンしてたんですか?」
「え? うん。なんで知ってるの?」
「あっ、この間雪音さんの家に行った時に写真があって」
「あぁ。あの写真ね。二人は昔からダブルス組んでてすごく強かったんだよ。俺も二人を追って入部したんだけど、二人みたいに運動ができる人間じゃなくて……仮入部の時に辞めたんだ。ハハッ、情け無い」
漢助が退室したからか、緊張感が抜けた新は笑顔を浮かべるようになった。
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