353人が本棚に入れています
本棚に追加
/157ページ
新は思っていたよりも明るい性格のようで、笑みを浮かべる回数が更に多くなった。
それは、少しずつ十汰に対しての距離感を縮めてくれたからかもしれない。
それに、探偵の助手として漢助に付いて来てはいるが、見た目が幼稚過ぎる十汰には漢助のような凄みは無いので、警戒心を抱かれにくいようだった。
「雪音さんの好きな物って何か分かりますか?」
「好きな物……うーん。ケーキかな」
「ケーキ?」
「そう。ケーキとか甘い物が雪音は好きだったよ。俺の姉は花が好きだったんだけど、そんな姉に、雪音はいつも花より団子って言って甘い物食べてた」
その時の事を思い出したのか、新は優しい笑みを浮かべ、少しだけ目尻に涙を溜めていたのだった。
「少しだけ変わり者って言えばそうなのかもしれない……でも、とても素敵な女性だったよ」
「そう…ですか……」
その言葉に、十汰はそう言うしかなかった。
他の言葉が見当たらない。だって、新は、まだ雪音の事を愛している。
例え、大切な伴侶がいても、雪音に対する気持ちはまた別なのかもしれない。
最初のコメントを投稿しよう!