353人が本棚に入れています
本棚に追加
そして、漢助は伝票を持ち立ち去ろうとして足を止めた。
「雪音さんの一番親しい友人はご存知ですか?」
その質問に、新は首を横に振る。
「交友関係は広い人でしたけど……姉以外にとても親しい友人がいるとは聞いた事はないです」
「そうですか……」
「あっ、でも。仕事仲間で一番仲が良さそうだったのは受付の加納さんだと思います」
「加納さん?」
「はい。加納咲子さんです。さっき、俺に内線した子です」
そう言われ、ふとその子の顔が浮かんだ。
「あっ! ショートボブの子!」
「そうです。その子です」
確か、胸元のプレートにそうな名前が書いてあった気がする。
左目のすぐ横にホクロがあって、それがとても印象的だった。
「あの女か……」
漢助は加納の名前を聞き終わると、そうボソッと言ってすぐに退室し、会計をしに行ってしまった。
「ちょっ、漢助!?」
なので、十汰が漢助の名刺を渡す羽目になってしまい、十汰は慌ててショルダーバッグから漢助の名刺を取り出した。
「あの、色々と情報提供をありがとうございました。また、何か思い出したらすぐにこちらにご連絡下さいっ。あと、これは俺の番号です。漢助に言いにくかったら俺にどうぞ!」
そして、十汰はスラスラと手早く自分の番号を書き、はいっと言って新に渡す。
最初のコメントを投稿しよう!