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新と会った日にそのまま咲子に会いに行った。けれど、タイミングが悪かったのか、咲子は前々から半休を取っていたようで、受付には咲子の姿は無かった。
そして、次の日。
十汰は漢助と共にまたさきえの会社へと足を運んだ。
その途中。漢助がガムを買うと言いだし、スタスタとコンビニに向かったので、十汰はその近くにあった花屋に立ち寄った。
すると……。
「来てくれたんですね」
「え……? あ、こんにちは」
声を掛けて来たのは昨日、さきえの会社で会った花屋の男だった。
確か、他織長信とか言う男だ。
ふと上の看板を見ると、そこにはちゃんとタオリフラワーショップと書かれていた。
「まさかこんな早く来てくれるなんて。とても嬉しいです」
長信は興奮したように十汰を見詰め、嬉しそうな顔を向けてくれた。
「近くに用事があって、来てみたらそうだったんです」
「そうなんですね。どうぞ、中に入って見てって下さいっ」
「えっと、連れが出て来るの見とかないといけないので、ここで良いです」
「そうなんですか? なら、ここにあるお花達、じっくり見てって下さい」
「はい。ありがとうございます」
十汰は長信の親切な対応に、ニコッと笑みで返した。そして、長信に言われた通りにお花を見る。
けれど、どこを見てもかすみ草でいっぱいで、店の奥にあるのが薔薇やチューリップ、ガーベラのような華やかな花達だった。
「かすみ草ばかりでつまらないですか?」
そう問われ、十汰は首を横に振る。
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