第4章 行動

16/34
前へ
/157ページ
次へ
***  新と会った日にそのまま咲子に会いに行った。けれど、タイミングが悪かったのか、咲子は前々から半休を取っていたようで、受付には咲子の姿は無かった。  そして、次の日。  十汰は漢助と共にまたさきえの会社へと足を運んだ。  その途中。漢助がガムを買うと言いだし、スタスタとコンビニに向かったので、十汰はその近くにあった花屋に立ち寄った。  すると……。 「来てくれたんですね」 「え……? あ、こんにちは」  声を掛けて来たのは昨日、さきえの会社で会った花屋の男だった。  確か、他織長信とか言う男だ。  ふと上の看板を見ると、そこにはちゃんとタオリフラワーショップと書かれていた。 「まさかこんな早く来てくれるなんて。とても嬉しいです」  長信は興奮したように十汰を見詰め、嬉しそうな顔を向けてくれた。 「近くに用事があって、来てみたらそうだったんです」 「そうなんですね。どうぞ、中に入って見てって下さいっ」 「えっと、連れが出て来るの見とかないといけないので、ここで良いです」 「そうなんですか? なら、ここにあるお花達、じっくり見てって下さい」 「はい。ありがとうございます」  十汰は長信の親切な対応に、ニコッと笑みで返した。そして、長信に言われた通りにお花を見る。  けれど、どこを見てもかすみ草でいっぱいで、店の奥にあるのが薔薇やチューリップ、ガーベラのような華やかな花達だった。 「かすみ草ばかりでつまらないですか?」  そう問われ、十汰は首を横に振る。
/157ページ

最初のコメントを投稿しよう!

353人が本棚に入れています
本棚に追加