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ここに来る前よりは良くなったけれど、不意打ちの一人にはまだ弱い。
十汰はこのどうしようもない不安から逃れたくて、近くにあった漢助のジーンズを手に持つと、ぎゅっと強く抱き締めた。そして、キングサイズのベッドに身体を沈める。
でも、それが悪かった。
「う……うぅ……」
テスト勉強のせいで徹夜が続き、身体は疲れているのに脳だけは冴えていた。だからこそ、あの忌わしい悪夢が十汰を襲う。
－－－おい、十汰起きろ……。
そんな十汰に光が入る。その低くて心に届く声がいつだって十汰をあの悪夢から救い出してくれる。
今もそうだ。
「う……やだ……怖い…っ…」
「十汰！」
「……漢助？」
そう。この、スーツを着崩して疲れ切った顔をした男。伊達坂漢助が助けてくれるのだった。
「悪いな、下の奴と話してたんだ」
「ううん……。大丈夫だよ、いつもの夢を見ただけだから」
「それが大丈夫な事じゃねーだろ。馬鹿」
「ごめん……」
漢助の顔を見ると、いつもの冷静な漢助の顔をしていなかった。
たぶん、十汰の魘された姿を見て、心配してくれていたらしい。
「身体が疲れてたから夢なんて見ないと思ったんだ……。でも、俺の考えが甘かったみたい」
震える身体。夢から覚めたのに、まだその名残が現実にも残っていた。
十汰はどうにか抑えようと、震える身体をギュッと自身の両腕で抱き締めるが、今日はいつもより収まりが遅い。
こんな事久しぶりだ。
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