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咲子は一目散に漢助の横を確保した。それを見て、十汰は咲子の目的が何かを知る。
(漢助目当てか!)
最初どうしようか悩んでいたのに素直に会う事を了承してくれたのは、十汰に警戒心を抱かなかったわけではなく、漢助とお近付きになりたかっただけのようだ。
咲子はニコニコと笑みを浮かべながら、個室になっている席へと先頭を切って入り、ストンっと座った。そんな咲子を見て、十汰はここが咲子の行き慣れたお店だと知る。
(なんか……大人って感じ……)
十汰はそんな咲子を見て、大人の女性ってこんな感じなのかと思った。
今の十汰の身近には、こんなにも女を醸し出している女性はいない。
まぁ、そこまで多くの女の子と話しているかと言えば、全くそうではないのだけれど……。
でも、こんなにも色気を出す人は周りにはいなかった。
「私、年上の人が好きなんですよねー。なんかこう、ダンディー系」
そう言って、手慣れた感じでウエーターにキティを頼む咲子。漢助も慣れた手付きでウイスキーのロックを頼んでいた。
「お、俺は……俺はえっと……カシスソーダで」
そう言った自分が子供のようで、なんだか居た堪れない。
「あの、お名前聞いても良いですか?」
咲子は運ばれて来たキティを手に持ち、そう言った。
その目は対面に座る漢助しか見えていないので、漢助だけの名前を知りたいようだ。
「伊達坂漢助」
漢助はゴクッと一口ロックのウイスキーを飲むと、そう咲子に告げる。
それを聞き、咲子は頬をピンク色に染め、大人の色気を纏う漢助に見惚れる。
「漢助さんね。渋くて素敵な名前ですね。漢助さんにピッタリ」
その漢助の横には十汰がいるのに、一度もこっちを見る事は無い咲子。
それは別に良い。
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