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久しぶりに飲んだせいか、少しだけ足に来た。
でも、意識はハッキリしているし、身体は熱いけれど真っ直ぐには歩けている。
ほろ酔い程度で店を出た十汰は、漢助の言葉に従うようで嫌だが、トボトボと事務所へと帰る事にした。
けれどその途中、コンビニに寄り、アイスとポテトチップスを買ってレジを終えると、背後から声を掛けられる。
「あれー? じゅったんじゃね?」
「え……? その声って……」
「俺だよー。もう忘れた? あの後連絡してくれなかったもんねー。俺はしたのにさー」
そこにいたのは私服の信之助だった。
信之助は隣のレジで何かを買ったようで、袋を二つ持ち立っていた。
十汰は出入り口で話し込むのは他の人に迷惑だと思い、外へと出た。そして、後を付いて来る信之助に謝る。
「ごめん。忘れてた」
と、言ったのは嘘。
連絡が来てもなんだか乗り気にはなれなくて放置していた。それに、信之助を見てると側にいた絢を思い出す。それが嫌だった。
「なぁ、今から一緒に飲まない?」
「え……?」
突然の誘いに驚く十汰。
アルコールも入り、思考がいつもよりも早く働かない。だから、断る言葉が上手く思いつかない。
「この近くに俺の友人の店があってさ、そいつとその店の休憩室で飲みするんだー。じゅったんも来てくれたら更に花が増えて嬉しいんだけど」
「えっと……俺は……」
どうしよう。助けてくれる漢助はいない。
そんな戸惑っている十汰の腕を、信之助は笑いながら掴んだ。
「いいじゃん、男三人で飲もうよ」
「え……?」
男三人? その言葉に引っかかる十汰。
だって、今、信之助は〝更に花が〟と言わなかっただろうか。更に、と付くなら女の人とかがいると思うのだが……。十汰は信之助の言動に何処か違和感しか感じられなくて、大きな目を更に見開く。
それに、掴まれた腕の感触に、ザワッと鳥肌が立った。
「あの! 俺、これからアイス食べるから行かないっ! です!」
「えー? アイスなんてそこで食えば良いじゃん」
「えっと、か、漢助の為にチョコミントも買ったから……寄り道したら怒られる」
そう言って、十汰は掴まれた腕を振り解き、溢れる脂汗を手で拭う。
なんでこんなにも汗が溢れるのか分からない。陽は落ちて、夏の暑さを今はそこまで感じないのに汗が溢れる。
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