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湿気でじめつく肌が更にこの場を気持ち悪くさせる。早く、早く離れたい。
「そっかー、残念。無理強いはよくないもんねー。また誘うから、次は来てねー」
「あ、うん……」
気が向いた日が来たら---そう、十汰は心の中で信之助に言った。
信之助は十汰に笑顔で手を振ると、青から赤に変わろうと点滅した信号機を見て慌てて道路を渡って行った。そして、その友人の店があると言う方へと歩いて行く。
「あれ……?」
その行く先に十汰はある事に気付く。それは、信之助が向かって行く先には長信のお店があるのだ。
もしかして……。そう思ったが、まさかなっと思った十汰はそのままコンビニから左に進み、家へと向かった。
そして、事務所があるビルの近くにまで来てようやく自分の失態に気付く。
何故、自分はビル一階に入っているコンビニでアイスを買わなかったのだろうかと。
「溶けてるじゃん……」
コンビニ前に着き、さっき買ったばかりのアイスを袋から取り出した十汰。そして、そのカップの容器をグッと力を入れて押してみる。すると、アイスは溶けてますよと言うように、容器には水滴がダラダラと付着し、買った時は硬かったはずの容器はもうぶよぶよだった。
「はぁ……最悪」
楽しみにしていたアイスはたぶんもう、冷凍庫に入れても元には戻らないだろう。だからと言って、もう一回同じアイスを買うのもお金の無駄に思える。
「我慢するか……」
酔っていたからと正しい判断ができなかった自分の責任だ。
そう自分に言い聞かせ、十汰は後ろ髪を引かれながらエレベーターに乗り、五階のボタンを押した。
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