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事務所に着くと中は当たり前だが真っ暗で、寂しさを覚える。
それに、今の気持ちが相俟って更にいつもより暗く感じた。
十汰は事務所を通り過ぎ、直ぐにリビングへと向かうと真っ先に電気を点け、側にあったエアコンのリモコンを持ってピッとボタンを押した。
エアコンは直ぐに起動し、涼しい風を十汰に向け、それを感じた十汰はソファーに勢い良くダイブした。
「漢助のエロ馬鹿探偵野郎……」
そして、クッションをぎゅっと抱き締めてそう小声で言い放つ。
今頃漢助は咲子と……。そう思うと泣きそうになる。
そんな事絶対にしないと思っているのに、頭の中では漢助と咲子がベッドの上で、言葉では言えないようなあんな事やこんな事をしている。
「絵になるんだよな……男前と美女って……」
そこまで想像してしまう豊かな自分が恨めしい。
絶対絶対絶対、漢助は十汰を裏切るような事はしない。そう、信じてるのに---時計ばかりが気になる。
「早く帰って来いよ……」
早く帰って来るって言ったの漢助だろ。なんでこんなに遅いの。
時計の針が動く度、十汰はどんどん不安に押し潰されそうになり、落ち着かない動きをソファーの上で何度も繰り返した。
「おーそーいぃー………」
そう言いながら足をバタバタ、用もないのにスマホをいじいじ。そんな事を繰り返す。
そんな事をしているうちに、アルコールと疲労が一気に来てしまったのか、十汰はいつの間にかソファーの上で眠ってしまうのだった。
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