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それから数分後、人の気配がした。
漢助かな。そう思ったが、睡魔に負けてしまった十汰は目を開ける事はできなかった。
---昔と変わってないね……。
耳元でそう囁かれた気がした。
でも、その声は何だか漢助とは違うように思える。
夢だからなのだろうか。それとも、睡魔が強過ぎて感覚がおかしくなっているからだろうか。
それに、何故か腹部辺りにも違和感を覚える。
何故だろう。
---可愛いね……。
けれど、その言葉を聞き、十汰はあの出来事を思い出す。
あの、トイレに連れ込んだ男の事を……。
「十汰!」
十汰はギュッと身体を硬直させていた。目だって強く瞑って、息も止めた。すると、近くにあった人の気配がスッと消えて、次に十汰がずっと待っていた男の声が聞こえて来た。
「か…んすけ……?」
これは夢? さっきのも夢?
まだ思考回路が定まっていない十汰は、ぼうっとしたまま、目の前で心配した顔を向けている漢助を見詰めた。
「大丈夫か!?」
「え……? なんで……?」
そんな怖い顔をしているのだろうか。そう思って自身の下半身を見詰めた。
「! な、なにこれ……」
キッチリと閉めていたはずのジーンズのファスナーが全開で、シャツが腹部まで撒かれていた。
寝相が悪いからなんて思えない。それは異様な光景だった。
誰かにされた。そう言った方が説得がある。
いや、でも、そんな事あるはずない。
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