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まさか、そんな。
十汰はどんどん怖くなって来て、自身の身体をギュッと抱いた。
「鍵開けっ放しだったぞ! なんで閉めなかった!」
「ご…ごめんなさいっ」
「たくっ……なんでお前は自分にそう疎いんだ」
「ごめん……」
漢助はそんな十汰に憤りの言葉を言い放つ。そして、自身の頭を右手でガシガシッと掻くと、盛大な溜息を吐き十汰の身体を抱き締める。
「悪い、お前が悪いみたいな言い方した……。お前は悪くないのに……」
「かんすけ……っ」
十汰はふるふる震える身体を動かし、漢助の身体を抱き締めた。
でも、その時。背中に挟まっていた何かが、ヒラヒラッとフローリングに落ちる。
「!」
「十汰?」
その落ちた写真を見て、十汰は表情を強張らせ、顔色を真っ青に染めた。
「な…んでこんな……」
その一枚の写真に、十汰は見覚えがあった。だってそれは、五年前の自分だった。
夏服の制服を着た、若かりし時の自分。
実家の塀が背景に写っていて、カメラなどに気付いてはいない隠し撮りされたそれ。
「なんだ……これ……」
それを拾った漢助が、驚きと憤りを醸し出す。
「なんで……あの時の写真が……」
十汰は写真の左下に書かれた日付に、更に恐怖が増す。だって、その日は……。
「お…俺……どっか行く」
「十汰?」
ガラガラの男の声。
般若のお面から臭うアルコール。
それに混じり、煙草の臭いがふわっと香る。
あの時された行為や状況が、また、鮮明に込み上げる。
恐怖でパニックに陥った十汰は、漢助から離れ、逃げるようにここから離れようと玄関へと向かった。
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