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さきえは早く真実が聞きたくて、その日の夕方に顔を出した。
その表情は複雑そうで、十汰はさきえを事務所のソファーに座らせると、お茶と、近くの老舗で買ったずんだ餅を前に置いた。
「これ、この間テレビでやってたやつなんですけど、葉山さん食べて下さい」
「え……? あら、いいの?」
さきえがずんだ餅を好きだと、この間会った時に言っていたのを覚えていた十汰は、午前中にそれを買っておいた。
勿論。漢助には下のコンビニで買ったチョコミントアイス。
「お邪魔します……」
「え……?」
漢助が何処かに行っていたと思ったら、漢助の後ろから絢が顔を出した。
何故、ここに絢を連れて来るのか。十汰は一人、混乱した。
「好きな所座れ」
「もー。なんなのよ急に連絡してきてー。さっさと終わらせてよね」
絢はスーツ姿ではなく私服だった。それを見ると、今日は休みだったようで、何処かへと行くつもりだったようだ。
けれど、絢は事務所の中にさきえがいる事に気付き、ハッとなり静かになる。そして、頭を下げてさきえの隣に静かに座った。
事務所の中に大人四人。十汰は漢助が話しをする前に慌ててお茶三つを淹れ、自分用に買っておいたずんだ餅を絢の前にそっと置き、自身も漢助の横にちょこんと座った。
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