353人が本棚に入れています
本棚に追加
/157ページ
漢助は十汰の淹れたお茶を一口飲むと、一枚の写真をそっとテーブルに置いた。それを見て、十汰は驚く。
「誰よこの人」
でも、絢はその男を初めて見たようで、小首を傾げていた。その横で、さきえがその写真を手に取り、十汰と同じように驚いた顔をするのだった。
「この人……私の会社で契約している花屋の従業員です……。確か、そのオーナーの御子息だとか……」
その写真に写っていたのは、タオリフラワーショップのエプロンを身に付けた長信だった。
その隠し撮りされた長信は、大きな植木を担いでいる姿で、撮られているとは全く気付いていない様子だった。
でも何故、漢助は長信の写真を見せて来たのだろうか。十汰にはまだその漢助の意図が分からず、混乱するばかりだ。
「この方が雪音とどんな関係が……」
「娘さん、ストーカー被害にあっていた事をご存知でしたか?」
「え……? 雪音がストーカーに……?」
「やはり、ご存知無かったですか……」
漢助はそう言うと、A4紙数枚を纏めた報告書をさきえに渡す。それを、隅から隅まで見たさきえは、ボロボロと涙を流し始めた。
「そんな……」
「娘さんの会社の後輩の方にお話しをお聞きしました。でも、娘さん自身はそこまで危機感を覚えていなかったようで、あまり口外はしていなかったようです。青葉新さんにもお話しを聞きましたが、そんな話しはしてなかったようなので、この事を知っていたのは後輩の方以外はいなかったと思います」
漢助はそう言うと、雪音の死の真相を語り出す。
最初のコメントを投稿しよう!