353人が本棚に入れています
本棚に追加
/157ページ
そこには、画面いっぱいにその写真が反映され、写りもハッキリとして綺麗だった。
そして、その長信の顔が鮮明に見える。
「動画……入手した」
そう言って、竜平はキーを押し、雪音が新と一緒に飲んでいる時の動画を流した。
その動画は雪音が亡くなる少し前の物。
それを見て、さきえはハンカチで目元を押さえ、嗚咽を零していた。
「雪音……」
楽しそうに笑っている雪音。その動画には音声は無く、何を話しているかまでは分からない。
新との二人の飲みはとても楽しそうだった。雪音は笑っているし、新も複雑な心を抱えながらも楽しそうだった。
でも、時折、雪音は切ない顔に変わり、空いた椅子の置いたかすみ草の花束を触る。
そんな雪音の心理までは皆、分からない。
「この一時間後……」
竜平は動画を早送りし、二人がその場から立ち、会計を済ませるシーンを見せた。すると、その数秒後、長信も会計をする所が映った。
「外の奴も入手できたか?」
そう漢助が聞くと、竜平は何も反応無くキーを押し、画面を切り替えた。
「二人が店の外で別れ、雪音さんは右に、青葉さんは左に進んだ。その後、男が雪音さんの後を追うように右に進む……」
漢助はこの防犯カメラを前に見ているらしい。その雪音と長信の行動を把握していた。
画面は雪音の後を追うように、次々に違うカメラに移行して、雪音と、雪音の後を追う長信を映し出す。それはとても不気味なほどに……。
「なんでこんな動画……」
絢は、何故こんな動画が入手できたのかと漢助に聞く。
探偵だと言っても一般人。こんな大量の防犯カメラのデータを入手できるわけがない。店側だって、断るはずだ。なのに……。
「知人の弁護士に頼んで、店側に口利きして貰ったんだよ。雪音さんが店を出てからマンションまでの間にある防犯カメラを全て見たくてな……」
漢助はそう言うと、ふっと鼻で笑った。その漢助の表情を見て、絢が突っかかる。
「ねぇ、それって違法じゃないの? そんな事、普通できないわよ……」
絢は漢助のその言葉を聞き、そう言い放った。職権濫用だとそう刑事の目で言ってくる。
「俺がそんなの気にして動くと思うか?」
「!」
「使える物は全て使う。それが、真実に近付くならどんな手段でも……だ」
その目は本気だった。
最初のコメントを投稿しよう!