第1章 探偵

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 たぶん、十汰が目を覚ましてそのまま抱きしめ続けているのが恥ずかしくなったのだろう。  側に誠もいるし……。 「アイツ照れたな」 「本当。漢助って顔よりも態度に出やすいですよね」 「昔からだよ」 「やっぱり」  恋人なのだから恥ずかしく思わなくてもいいのに。そう十汰は思うのだが、漢助は昔ながらの男なので堅物な一面があった。  だから、あまりデレたり十汰を可愛がったりはしない。  勿論。人の前でなんて以ての外。 「漢助って今日一日中そっち(法律事務所)にいたんですか?」  そう尋ねると、誠はコクッと笑顔で頷いた。 「ちょっと色々あってね」 「色々? 色々ってなに?」 「それは内緒」 「えー」  そこが聞きたいのに、その銀縁の眼鏡からは心が読めない。  いつもそうだ。漢助と誠には深い絆があって、そこには恋人の十汰でさえも入ってはいけない空気が漂っていた。  たぶん、仕事の話しなのだろうが、漢助は一度も恋人であり、相棒の十汰には何も話してはくれないのだった。  だから、十汰は未だに漢助と共に探偵の仕事をした事がない。行きたいと言っても、一緒に連れて行ってくれないのだ。  猫探しくらいならできるのに、酷い話しだ。
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