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話しが一通り終わり、漢助と竜平は依頼の続行。絢は内部から探り、十汰は……。
「お前は暫く動くな」
「え?」
と、漢助に言われた。
まさか、そんな事を言われるとは思わなくて、十汰は驚いた顔を漢助に向ける。
「どうして! 俺にだってできる事あるよ!」
「あるが、するな」
「どうして!」
「どうしても、だ」
「そんな……」
漢助にそう言われ十汰は落ち込む。
これから更に色んな人に聞き取りしたり、長信に探りを入れたりしようと思っていたのに、それを止められてしまった。
「俺が役に立たないから……?」
「そう言ってるわけじゃない。ただ、この先は危険だからだ……」
「危険でも良い。俺は漢助の役に立ちたい」
側にいたい。
「十汰君だっけ……この先は私達で探って行くから、自ら危険な道を選択しなくて良いのよ。こっからは、専門家に任せて」
絢は十汰が我儘を言い出したと思ったのか、そう言って説得してきた。
その言葉が、今の十汰には酷だとも知らず。
「白石さん……」
白石絢。敏腕の美人警部で、漢助の元恋人だったらしい人。そんな人が漢助の力になれているのに、今の恋人である自分が役立たずなんて、恋人失格に思える。
漢助は十汰の事を好きだと言ってくれている。
でも、もし、この依頼がきっかけで絢との中が深まったら……そう思うと居ても立っても居られない。
そんな空気を、さきえが途切れさせる。
「私、そろそろ仕事に戻らないと……。ごめんなさいね、何もできなくて」
さきえは申し訳なさそうにそう言って立ち上がり、腕時計を見ていた。
忙しい中ここへと来たさきえには、次の予定が詰まっているようだった。
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