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こんな十汰を見たら、両親や兄は驚くだろう。それほど、十汰は大人しい子供だった。
「ねぇ、俺の事知ってたの?」
「……なんで?」
「漢助が俺の身が危なかったからって言ったら、無料でしてくれたって言ってたから」
「……あの野郎」
竜平は十汰のその言葉に、漢助に対しての悪態を吐いていた。そして、顔を少しだけ赤く染める。
「……飯」
「メシ?」
「お前、時々あいつに差し入れするだろ」
「あいつって、先生(誠)?」
「そう。その飯……俺も食ってんだよ……」
「そうなの!?」
まさか、今まで差し入れしていた物が竜平の胃にも入ってたとは思ってもいなかった十汰は、フロア内でそう大きな声を出してしまう。
それくらい、驚いたのだ。
「知ってたら二人分作って持って行ったのに……」
そう十汰が言うと、竜平はあまりしないのだろう、ぎこちない笑みを十汰に向けるのだった。
「そう言うと思った……」
「え……?」
「なぁ、あれ食いたい」
竜平はもう自分の存在を十汰に知られたからか、急にリクエストをし始めた。
「あれってなに?」
そう尋ねると、竜平は少し間を置きボソッと答える。
「……エビチリと麻婆茄子」
中華! まさかのリクエストに十汰は驚いた。
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