第一話 夢

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 ――パチリと一度、大きく、静かに目を瞬いた。  どこからか吹くあたたかな風が、呆然と立ちすくむ俺の頬を撫で付ける。  手のひらサイズの小さな小瓶を手にしたまま、いつの間にか、俺はあの店の中から緑豊かな大草原の中に佇んでいた。  あたたかな陽射しが眩しく、草を揺らす風が心地よい。空には真っ白な鳥が飛び交い、元気な歌声を響かせている。  ああ、ここは、一体……。 「――じっちゃん!ばっちゃん!」  明るい声がした。  いつの間に現れたのか、俺の左手側に人がいた。麦わら帽子を被る、小麦色の肌の少年だ。  少年は虫取り編みを手に、大草原の中を駆け抜けていく。それはもう風を切るように、素早く、自由に。  白い半袖のシャツに動きやすそうな短パン。泥だらけのサンダル。肩から提げられた緑色の虫かご。  きっと今までカブトムシかなにかを捕まえに行っていたのだろう。虫取り編みを持つ少年の手は土にまみれていた。  ――あの少年を、俺は知っている……。
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