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「……楽しかった」
ぽつりとこぼれた言葉は、俺の口から発されたもの。
「なんの責任もなく、なんの心配もなく、泥だらけになりながら生きていたあの時代」
楽しかった。自由だった。
逃げる虫を追い回し、ただ網を振るうだけのそんな毎日が、最高だった。
あの日々がもう一度戻ってくればいいと、大人になってから何度願ったことだろう。叶わないと理解し、何度肩を落としたことだろう。
大人になるにつれて忘れていく、子供の頃の純粋な気持ち。かわりに得るのは薄汚れた社会での、挫けそうなほど辛い生き方。
「戻りたい。あの頃に」
ゆっくりと消えていく大草原。
遠い遠い向こう側で、笑みを浮かべて大きく手を振る少年を、心の底から羨ましく感じた。
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