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今まで深いところに沈んでいた意識が、急に浮上したような感覚に体が襲われ、ハッとする。
気づけば俺は、あの不思議な雰囲気の店内に戻っていた。
辺りを見回しても大草原は見当たらない。あの青空も、じっちゃんやばっちゃん、少年の姿もどこにもない。
「今のが夢です」
呆ける俺に、少女は言う。
「お客様が望まれるのでしたら、夢はどんな世界にも連れて行ってくれます。幻想的な世界。絶望にまみれた世界。楽しい世界。悲しい世界。未来の世界。過去の世界」
少女の視線は俺の手元へ。
俺もならうように手元を見た。
「お客様の手にするその瓶の中には……いえ。店内にある瓶の中には様々な『夢』が詰まっております。お客様のお気に召す『夢』も、探せばきっと、見つかるはず」
少女が微笑む。あどけないその微笑みに、あぁ、と心の中で声を出した。
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