第一話 夢

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 少女の売っているらしい『夢』。 非現実的なその商品は、例えるならば麻薬だ。  この甘美な味わいを知ってしまえば、俺はきっと、この『夢』なるものから逃れることは不可能になる。辛い現実から目を逸らし、作られた幸せに縋る毎日を送ることだろう。  けれど……。  そうだとは知っていながらも、手を出したくなるのはなぜだろうか。ダメだと思っていながらも、甘い誘惑に勝てないのはなぜだろうか。  日々の仕事と人間関係で蓄積された疲労が、今、こんなところで俺の背を押してくる。悪いことはないと。瓶の中の小さな幸せを手に入れろと。  まるで悪事を働くことを強要されているかのようだ。 「さあ、お客様」  少女がまた、首を傾げた。 「お客様の欲する『夢』は、なんですか?」
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