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「ありがとうございました」
キッチリと頭を下げ、礼を述べる。お客様はそんな私の前、過去の詰まった夢を手に、透けるように消えていった。恐らく元の世界に帰ったのだろう。
私はお客様から受け取ったお金を手に、カウンターの方へ移動する。それを見て、棚の上にいたクロが飛びついてきた。「おっと」と小さな声を出して小柄なその体を受け止める。
「相変わらず甘えん坊ですね」
クロは返事を返すように吠えていた。
気を取り直して、カウンターの裏に回る。そこから赤い、一つの四角い箱を取り出し、コンコンッと箱のフタを二回ほどノック。
「マネくん、お仕事ですよ」
声をかければ、ガチャッという軽快な音を響かせ、ゆっくりと箱のフタが開かれた。
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