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「……あー、ったく。なんだいなんだい?こんな時間に仕事かよ。勘弁してくれやリリィ」
そんな小言と共に箱の中から顔を覗かせたのは、葉巻を加えた小太りなおじさまだ。
身長は僅か20センチ。とても小さい。当然だ。彼は小人と呼ばれる類の生物なのだから、小さくなくては逆におかしい。
私はにこりと微笑み、おじさま――マネくんにお客様よりいただいたお金を差し出す。
「文句を言わずに働いてください。一応居候の身でしょう?」
マネくんはグッと言葉を詰まらせた。痛い所を突いてしまったようだ。
半ばやけくそに、ひったくるように私の手の中からお金を受け取り、マネくんはその小さな顔が歪むのではないかというほど、大きく、歪に、口元を尖らせた。
「ったく! リリィは人使いが荒いんだよ!」
「ありがとうございます」
褒め言葉です。そう続ければ、彼は顔を真っ赤にして「褒めてない!」と言った。
もちろんそんなことは知っている。わざとだ。
ブツブツ文句を言いながら、しかし丁寧な動作で札束や小銭を数えていくマネくん。その仕事姿を、私はぼんやりと眺める。
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