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見てわかる通り、マネくんの仕事はお金の計算だ。
ここに来るお客様は払うお金が全くと言っていいほど違うので、彼の存在は正直ありがたい。
ありとあらゆる物を見定め、その価値をはじき出すその才能はまさに天性のもの。口の悪さはいただけないが、助かっているのもまた事実。蔑ろに出来ないのが悔しいところである。
調子に乗るので決して言わないが。
「合計金額、四万六千円。物的価値、二万」
そんなことを考えていると計算が終わったようだ。「しけてんな」と文句を述べる彼の頭を咎めるように指先で弾く。
呻くマネくん。その腕の中からお金を受け取り、私はそれらを何事も無かったようにレジに仕舞う。
「リリィー。腹減ったぁ」
情けない声を耳に振り返れば、箱の縁に背を預けてふんぞり返るマネくんの姿が見えた。実に偉そうだ。恐ろしい程に箱を倒してやりたい衝動に駆られながら、私は時計を確認する。
「夜の19時……」
まあ、ちょうど良い時間だろう。
「わかりました。すぐ用意しますね」
一つ頷き、私は部屋の奥へと足を進めた。
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