第二話 就寝

4/10
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/80ページ
 見てわかる通り、マネくんの仕事はお金の計算だ。  ここに来るお客様は払うお金が全くと言っていいほど違うので、彼の存在は正直ありがたい。  ありとあらゆる物を見定め、その価値をはじき出すその才能はまさに天性のもの。口の悪さはいただけないが、助かっているのもまた事実。蔑ろに出来ないのが悔しいところである。  調子に乗るので決して言わないが。 「合計金額、四万六千円。物的価値、二万」  そんなことを考えていると計算が終わったようだ。「しけてんな」と文句を述べる彼の頭を咎めるように指先で弾く。  呻くマネくん。その腕の中からお金を受け取り、私はそれらを何事も無かったようにレジに仕舞う。 「リリィー。腹減ったぁ」  情けない声を耳に振り返れば、箱の縁に背を預けてふんぞり返るマネくんの姿が見えた。実に偉そうだ。恐ろしい程に箱を倒してやりたい衝動に駆られながら、私は時計を確認する。 「夜の19時……」  まあ、ちょうど良い時間だろう。 「わかりました。すぐ用意しますね」  一つ頷き、私は部屋の奥へと足を進めた。
/80ページ

最初のコメントを投稿しよう!