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「――あー、肉ないじゃん。なんで肉ないんだよ。肉ぅー」
案の定というかなんというか、やはり肉が見当たらないことに文句を言いながら身の丈ほどあるフォークで器用にトマトを突き刺すマネくん。
そんなに肉が肉がと言っているから太るのだ。痩せろ。少しくらい。
心の中で呟きながら、膝の上に乗ってくるクロを片手で撫でる。もふもふとした毛の感触は、いつ触れても良いものだ。
「しっかしよぉ、リリィ。お前さんももうちょい賢く商売したらどうだい? 今回売った夢、まだ多く金が奪えたろうに……」
小さな口の中にトマトを押し込み、マネくんは言う。
「いつまへも、ひゃふにあまひほは、ふひひはほほほおほ」
「食べながら話さないでくださいね。何言ってるかわかりませんしなにより汚い」
マネくんが座る机の上に散乱する大量のトマトの汁。それを指差し指摘すれば、マネくんは慌てたように口内に存在する物をゴクリと飲み込んだ。
「ゲフッ」
ああ、汚い。
腹にたまったガスを吐き出す彼に些か冷めた視線を送る。どうして彼はこうも礼儀作法がなっていないのだろうか。思わず頭を抱えたくなってしまった。いや、思わずというか既に抱えている。
「あー、つまりだ。俺が言いたいのは、だなー」
何事もなかったように、中断されていた話が再開された。
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