第二話 就寝

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 この世界の夜は非常に危険だ。そのため、戸締まりは早めにしておかなければならない。一度どうなるのか検証すべくカギを開けていたら、えらい目にあってしまった。その時のことはまだ鮮明に覚えている。実に良い思い出だ(マネくんからは怒られたが)。  店先に吊してある、『外からは見えない』ランプ。その銀色のふたをパカリと開けば、ランプの中に入っていた光たちが一斉に外へと飛び出していく。 「リリィ! また明日ねー!」  無邪気な子供特有の高い声を発し、笑いながら飛んでいく光たち。私は徐々に見えなくなる彼らに手を振り、店内へと戻り、扉を閉めた。 「……さて、皆さん。今日もご苦労様でした。明日に備えてしっかり休んでくださいね」  扉にカギをかけ、振り返りながら告げる。その言葉に従うように、店内を照らしていた明かりが一つずつ、ゆっくりと消えていった。 「リリィ、ちゃんと寝ろよ」 「わかっていますよ」  箱の中へと帰って行くマネくんを尻目、残った食事と空になった皿たちをトレーに乗せる。そして、店の奥へ。汚れた皿をキッチンの流しに積み重ね、そそくさと二階へ移動した。
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